kazuo ishiguro

補遺

最後に付け加えておくと、たしかにクローンを使うことはあまり経済的にペイしません。なので経済的にペイさせようと思えば、市場に任せてしまうという手があります。あえてそういう選択はしなかったことはもう少し考えてもいいと思います。 * それもこれも…

私を離さないで

ともあれ、作家がこの小説で作り上げたcreateした世界は、この小説内で、おそらくはその分身であるTomyの書いた小さな動物imaginary animalsのようなものでしょう。小さく書くことによってすべてが変わってくる。学校を出てはじめて可能になった"Art" The th…

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id:temjinus:20061012 (モアの)ユートピアというのは労働を社会の基盤においたひとつの世界であって、そのかぎりで、現代のわれわれの住む、それなりに効率的な世界といえます。かつては「どこにもない」世界ではあったのですが、いまとなっては「ここにあ…

金曜に

おっちゃんに呼ばれて、アジア情勢はどうなるかと聞かれたと思ったら、核実験になった。そのときは地政学とやらで考えるとどう考えても剣呑だから経済的に考えてほしいもんだけど、というような話をした。 * 石油も足らないとか言ってるし、中国の手に余る…

懐疑

しかし正直に言うと、みずから手にした力を行使し労働することに生き甲斐を感じる農民の言葉を、無下に否定しきることには躊躇を覚えることもたしかだ。おそらく現場を子細に見ると、一般的な文革のありようとはまた別の現実も見つかるのかもしれない。 だが…

追記

現実のユートピアにおいて達成されなかったのは貨幣の追放である。貨幣は欲望を刺激し、ユートピアの単純再生産社会を不可能にする。それはいわばイデオロギーがつねに不完全にしか作動してこなかったことをも同時に意味する。 それが(いわゆる欲望ではなく…

批判、と書いたけれどいまの日本語の語感からいうと適切ではなく、やはり「懐疑」とすべきだろう。それが懐疑であるがゆえに、それから後のしばらくはすくなくともほんとうに理想なのかもしれないとすら思える社会を描けたわけであるから。 * 正しいかどう…

補遺

手入れついでに、カズオイシグロの本がユートピア物語であるというのは、そのジャンルの特徴として、語り手はユートピアの人間ではない、ということがある。「物語」の主人公はだからある意味でトミーという「男性」なのだろう。 というのも、通常のユートピ…

livres

わたしを離さないで作者: カズオイシグロ出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2006/04/22メディア: 単行本購入: 10人 クリック: 568回この商品を含むブログ (547件) を見る非常にレビューの書きにくい書物。舞台設定はわりあいと早い段階でわかるし、別にばら…