2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

補遺

わが大阪の明日は、工業地域、準工業地域、住居地域、商業地域と、区分けはいまよりもさらに画然となり、その間を縦横に広々とした道路が貫通している。地下鉄は高架となって、市内から市外各所にのびている。千里山の団地はすでに完成して日本一の規模を誇…

岸里、天神ノ森2

南大阪と天王寺を結ぶ上町線と恵美須町を結ぶ阪堺線はちょうど阪神間がそうであるようにそれぞれが異なる階層の人びとが住む地域を結んでいる。『めし』の主人公である三千代が使っている天神ノ森の駅は、より貧しい地域を通っており、高級住宅地である彼女…

岸里〜天神ノ森

林芙美子の『めし』は小説というよりもむしろの映画のほうが有名かもしれない。未完ということもあるが、小説としてはそれほど面白いものでもないからだ。あらすじだけを言うと身も蓋もない。つてを頼りに仕事を求め東京から大阪にやってきた(というよりも…

天下茶屋2

南海の天下茶屋と阪堺線の北天下茶屋のあいだの商店街は、三つの部分に分かれている。南海側のもっとも天井が高くタイル舗装され、いかにも支援事業で整備しましたという風情の比較的「近代的」な部分。そしてその奥には、言葉の上では同じようなアーケード…

すい

すいなよう。とよく祖母はそう言っていた。祖母ほどではないが、母や叔母からもときおりこの言葉が聞かれるときがあった。あったというのは、いまはもうほとんどこの言葉を耳にすることはないからだ。富岡多恵子が西鶴について書いた『西鶴の感情』のなかで…

misc.

SOP

病院の駐車場には空き台数を表示する電光掲示板がある。SOPたちを見送りに車いすで玄関まで下りた。嫌がるmosaを自転車に乗せているあいだ、いつものようにSOPが掲示板を見て143台だと嬉しそうにぼくに話しかけてくる。143だから100台と40台と3台だよと言う…

天下茶屋

聖天山に続く曲がりくねった道の反対側には北天下茶屋の駅から、南海の天下茶屋駅まで続く薄暗いアーケード街がある。この路面電車の駅を下りてすぐは、壁を手で押すとそのまま崩れてしまいそうな店舗が連なっている。この10年のあいだにも、営業をやめた店…

帝塚山

この天下茶屋から東に坂道を登っていくと、住宅街が広がっている。戦前の東京周辺の宅地開発が同時に文教地区の形成を目指していたように、松虫から帝塚山にかけてもかつては大学を含め、とくに私学が多く存在していた。ぼくがはじめて働いた公立の学校もも…

阪堺線

しばらく続けていた仕事がすこし落ち着いたので、電車に乗って天下茶屋で下りる。夏休みになれば手術を受けねばならないから、しばらくはこうやって歩くこともできないという理由もある。廃校になった前の職場に勤めていたとき、今時は珍しくなった路面電車…