授業の準備で遅くなって学校を出ようとすると、雨はもうやんでおり、折りたたみの傘をたたんで鞄に入れ、研究室のある二階から照明の消された階段を下りてひんやりとした廊下を歩いて外に出ると、左の方からまるでクーラーの廃熱でも出ているのかと思うほどのむっとした熱気を感じ、何もないと知りながらもおもわず目をそちらに向けても、黒々とした夜のなかにやはり黒々とした雑草と20年前に植えられたという木々の影が見えるばかり。
それら植物から立ち上る水蒸気から、そろそろ夏が近づいていることを知る。