ニート

というのは移民労働者の問題であると思っていた。むろんこれは半ば結果的に、であるが、ヨーロッパでは若年失業ないし無業の問題は人種の問題に重なる。むろんマルクスの意味で結果的に、そうなるのだが。

日本ではかつて高すぎる労働力率をどう低めるかという問題関心のなかで語られていた。過剰労働/偽装失業(二重構造)が問題であったからだ。だから当然のように職業訓練(人力政策)とセットになっていた。最近は、労働力率をどう高めるか、という議論になっている。この人力政策はいまは人間力というようだ。ヴァウチャーも職業訓練利用券と言い換えるらしいので、小泉の趣味なのだろう。政治家や新聞が分かっていないからといって人間力という概念が曖昧なものだとは思わない。むろん生産性についての議論はすべて内容のないお喋りだという立場からすればそのような評価もありうるとは思うが。

内閣の諮問会議でも潜在的にはこの問題ー移民と雇用の問題ーはセットで語られている。しかしFTA/EPA自由貿易協定)がかなり具体的なかたちで議論になってきたから、そろそろこの問題をセットで語る準備をしておいたほうがいいのだろうか。厚労省はむしろ労働力率を高めることで、移民労働は厳し目の線でコントロールしたいのだろう。ニート/フリーター/男女共同参画/高齢者利用(NPO)はそういうふうにも見える。吉川洋は相対的にはこちら側(社会政策)の側に見えるが、よくわからない。
ちなみに人口がこれだけ減るということが分かっている以上、政策的には入れないという選択肢はない。念のため。

うちのような会社は単純労働がたくさん必要だとわりあいあけすけに語る自動車会社の社長は、それにはさほどの興味はなさそうで、やはりFTAEPAの推進といった方向性を強調している。移民労働者が増えると犯罪が増えて、社会の安全のコストが増えるという批判には本間(このひとは竹中を阪大に取ったことで有名な人。この人のグループは最近南大阪市にも食い込んでいるらしい)が、外国人労働者の犯罪率は統計を取ると高いわけではない、と批判している。むろんこの問題は社会の安全という社会的な主題を激しく喚起することになり、このグループもそれから自由ではない。ただしそれを深く考えることはしないので、家族の理想の復活と道徳教育の強調に走る。政治経済的にはコスモポリタンだが社会的にはトラディショナリストだ。ただしそうである以上、ユートピックだという批判は覚悟しなければならない。

それに対して人力政策の側は、職業訓練および教育を強調する。これは移民をよりコントロールしながら消極的に受け入れるという側になるはずだが、それは当然入れた移民への教育訓練のコストを考えてもそうなる。じっさい南or東大阪の地域の学校などでも、もうそろそろそのあたりのことは将来のことではなく、現実問題である。組合をやっているときにそのあたりの議論というか問題を会議などでずいぶんと聞いた。つまり上級学校への進学は3世代目ぐらいにならないとなかなかむずかしいからだろう。政治経済的にはこれはナショナリストになる。同化政策の側に振れるからだ。ただし社会的にはモダニストになる。そのため一見するとこちらのほうがユートピストに見える。

このあいだ小泉が外国人の参政権の問題について触れていたそうだから、どちらかというと現政権ではナショナリストモダニストの線で考え始めたということなのだろうか。最近の財界人や政治家は昔と比べるとやや賢明さに欠けるような気がするので、安穏とはしていないほうがよいのだろう。

日銀がこんなに早く引き締めるとは思わなかったので、すこし遅くなるかもしれないが、それでもこの問題にたいしてどういう立場を取るのか、ある程度の準備はしておいたほうがいいだろう。低成長のままが続くこと、なかなか厳しい立場に立たされるだろう。

社会的なコストを考えると、嫌韓とかそういうのを煽るのはそろそろやめておいたほうがいい。あえてリスク・チャレンジするほどの意味はないように思う。革命でもするなら別だが。

明日の仕事は3940円ぴったり使うこと、だそうだ。

3970円だった。