電波バカ一代
月末に弟の結婚式がある。この時期に着るスーツがなくて、いつも春夏物を着てごまかしていたのだが、さすがに親族となると黒いスーツでないと困る。ただ黒いのは夏物しかないので、よっしゃ! と天王寺に買いに行く。雨中SOPをスリングに入れ、抱っこして駅に向かうも、とちゅうでなぜか放置してあった間伐材に躓いて転ぶ。SOPもおでこを打つし、SOPを庇って肘を強打。変な姿勢で転けたので腰も痛い。スーツに合わせようと思って着ていったPaul Smithのシャツも肘が破け、雨もあってみょうに派手に血がにじんでいる。mayakovも血相をかえて飛んできた。SOPもおでこが少し赤くなっているが、こぶもできていないみたいだからたいしたことはないのだろう(と思いたい)。しかし自分の失策に、ものすごいへこむ。
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そりゃSOPもびっくりして大泣きするし、這々の体で家に帰る。どうやらたいしたことはなかったようで、一休みしてもういちど出直す。
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大昔、じいちゃんが漕ぐ自転車の荷台に乗ってはしゃいでいたら、足が後輪にはさまったことがあって、一応医者には行ったのだが、措置も悪かったようで、一部壊疽を起こしたことがある。子供心にじいちゃんがものすごいへこんでいたのを覚えているけれど、その気持ちがわかった。じいちゃんは二度と決して、なにがあっても自転車の後ろには乗せなかった。
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いろいろ考えると、この日しか服を買うチャンスはないから、何軒か店を回って検討する。いままで何枚かスーツを買ったが、大きめの服は新品の時はよくてもなんどか着てクリーニングにかけ、生地が弱くなるとてきめんに体に合わなくなる。だがジャストのサイズだと何度か洗っても大丈夫なのだ。今回も形やデザインよりもジャストのサイズのものを見てゆく。
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一時期、法律でも決まったのかと訝しくなるほどにスリー・ボタンのスーツしかなかったが、そろそろそういう謎の習俗は終わりになったみたいだ。ジャストのサイズであればツーボタンのほうが似合うみたいなのでツー・ボタンが増えてきてうれしい(というかツー・ボタンはジャストじゃないと着れないように思う。つまりスリー・ボタンよりごまかしがきかない)。
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ワン・ボタンの黒のスーツ(これは若者向けなのでちょっととんがっている)とツー・ボタンの少し織り柄の入ったスーツ(これはもう少しコンサバ)で迷うが、結婚式だしいい年なのでツー・ボタンのややコンサバな方を選ぶ。
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が、もともとやせ気味、かつどうも今シーズンというか近頃はまたいっそう細身にウエストを絞っているようで、気がついたらなんかモッズといっても通用しそうなシルエットになっていた。
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あいつらには絶対着れないから、まあいいか!
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SOPは売り子のお姉さんに構ってもらってご満悦だった。
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途中学生に見つかりながら、家に帰ると、買い物で高揚した気分もすっかり醒めてきて、やっぱり転倒したことが思い出されてまたまたへこんでしまう。
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結婚式にでるのは二度目だ。一度目はほぼ20年ぐらい前でいとこの結婚式だった。それ以来。結婚式するやつが少ないのか、友達が少ないのか。