学歴詐称

と言っても、大卒なのを高卒と偽って、採用された職員があちこちの自治体で処分されている。神戸ではとうとう懲戒免職になった。こういう場合、実質的には働きにくかろうから、諭旨免というのはわからんでもない。だが懲戒免職というのはよくわからない。
ぼくらの頃から高卒の就職口の確保という名目で、こうした雇用はあったように思う。ただ漠然と、それは高卒以上という受験資格であって、大卒を排除するものだとは思っていなかった。じっさいぼくの年齢だと大学進学率は短大込みで3割チョイだったから、よほどの物好きでなければそういう職に応募することは実質的に問題にならなかったのだろう。バブルもやってきたわけであるし。
どうしても高卒ということであれば、試験問題をいろいろ考えてみるとか、そういった間接的な努力で意図する結果をなんとか達成しようとしていたのだろうと漠然と思っていたのだが、どうやらそうでもなかったらしい。
懲戒免職というのはしかしなかなか穏やかではない。まあ最近の報道はあれだから、よくよく調べないとあれなのだが、通り一遍の報道から判断するに、純粋に学歴だけが問題になっているように読める。高卒以上、とか大卒以上、とかいうのなら、なるべく医者には医学部を出ていてほしいから、まあ資格を問うているのであろうということはわかる。まあ「権利上」は誰にでも門戸は開かれているわけであるし。が、高卒以下という条件が成立する理屈はもひとつよくわからん。つまり大学を出ると、ある職業から「権利上」排斥されるポイント・オブ・ノーリターンを越えてしまうことになるからだ。
とくに資力調査などをやるのでなければ、学歴だけで集団をふたつに割っておるということになるのだが、なかの仕組みから考えて、懲戒免職にする以上、なんぼなんでも顧問弁護士との相談の結果であろうと思う。しかしいまひとつどういうロジックで正当化されるのかよくわからない。
政策目標でかつ努力目標というのならわかる。ただ、懲戒免にできるということは、かなりきっちりとした犯罪行為(に類するもの)であるはずなので、うむ、それって犯罪なのか、ということなのだ。
アファーマティヴ・アクションも分かる。学歴というのはしかしアファーマティヴ・アクションの対象になるのか?(なら論の建て方にもよるが比例代表区は今すぐにでも学歴区分をやるべきだというようなことにもなりかねない。それはそれでおもしろい。)資力調査に類するような問題設定なんだろうか。だとすると異論はないが、非常に不十分だが育英会などというのもあるし、学歴で切ることとはいささかずれてしまう。

あるいは直接学歴が問題になるのではなく、調査に正直に答えなかったという点を問題視しているのだろうか。たしかにインディアンと公務員は嘘をついてはいけないとはいえ、たんに質問に正直に答えなかったというだけで懲戒免職まではもって行きにくいだろうから、やはりかなり実質的な条件として高卒以下という条件があった、ということなのだろう。いやつまり、

あなたは小学校をでましたか?
はい。
中学校は?
はい。
高校は?
はい出ました。
大学は?
これは私事で秘密です。

これは駄目だってことだな。なんか腑に落ちん。まあ教育というのは私事と公事が絡むから微妙な分野ではあるのだが、それにしても教育への公費負担および助成というのとはちょっとまた違う話だしな。

いや、商売柄ね、おれのところにくると、一定の仕事から「権利上」排除されるというのは、やっぱ、まあそんなに欲張っているわけではないが、やはり落ち着かないわけだ。まあしかし顧問弁護士に相談した結果だろうなあ(やってなかったらそれこそ濫用だしなあ。懲戒免職なんて一存では、やばくてできないよな。)。なんか理屈があるんだろうなあ。