Kindle

アマゾンのキンドル(Kindle)を買ってしばらく使ってみた。感想はといえば、これは買わない方がいい。

ハードが悪いのではない。むしろあの電子インクはよくできている。操作性もまあ許容範囲。何が悪いといって売っているソフトがまるで駄目。ハードはそこそこなのに、ソフトが駄目というまるでSONYが作ったのかという感じになってしまっている。
とくに新刊にかんしては、アメリカのKindle Storeで買えるものが、たぶん版権の関係で日本ではまったく買えない。つまり買おうと思っていたまさにそれが買えないのだ!

だいたい日本で海外の本を読もうとすると大阪や京都でさえ、悪い方向で精選されたものしかないため、事実上、東京以外はアマゾンで買うしかないのだが、しかし新刊書というもの(とくに小説とか、エッセイとかそういったもの)は、いまこのタイミングで読みたいということが多い。そのへんの不満が解消されるかと思って買ったのだが、残念ながらそういったものほどkindleでは、というか日本では買えない。
研究書や、著作権の切れた古典なんかはまあわりと自由に買えるのだが、後者はしかしインターネットでただでダウンロードできるし(googleというもう一人の巨人様が暴れているし)、前者はあんまり安くはなっていないし、そもそもページ数が分からないので引用しようと思うと、結局紙の本が必要になる(研究書でもアメリカでは売っているが、日本では買えないものがときどきある。だれかが翻訳中ということだろうか?)。それにいくら持ち運びに便利だからといってCharles TaylorのA Secular Ageみたいな凶器にもなりますというたぐいの本を、あの画面で読むのはちょっと考えてしまう。それにPocockのBarbarism and Religionを四巻だけ64$で買ってどうする。
だからまあ小説やエッセイを読むのがいちばんいいハードなのだが、それが買えないのでは・・・。

せっかく田舎から出てきたのに、けっきょく気がついてみるとまた田舎に閉じこめられている気分だ。

買おうと思っているひとは、いちどamazon.comで調べたほうがよいですよ。

追記

現状Kindle Storeがどうなっているかをわかりやすく言うと、こと小説にかんしては、大阪や京都といった地方都市の洋書屋の棚に似てしまっているのがひどく辛い。東京の本屋と勝負すれば圧倒的に負けてしまっている。翻訳が出て、しばらく時間のたっているようなものなら買えるのだが・・・なんだそれは。
おそらくこんなものを喜んで買う馬鹿はせいぜい三桁どまりだから、こんな不満が解消されるはずもなく、そのうち日本のアマゾンで日本語が表示できるものが出たときに、きっとこういう英語の新刊本も買えるようになるだろうが、たぶん現行のキンドルはそれに対応しないに決まっているのだ。

とはいえハードやシステムはよくできている。これはちょっと感心した。電子インクというのは想像以上に目が疲れない。それに文字が拡大できるのは、紙メディアにたいして、はっきりとアドヴァンテージがある。これは将来的に効いてくるかもしれない。レジュームから復帰後にページを戻そうとするとなぜか一回目の操作の時だけ普段の5倍ぐらい後ろに飛んでしまうといういかにもなバグがあるのはいただけないが、それ以外は操作性も許容範囲だ。
それよりもなかなかよいのは、書籍代に通信費が含まれているというこのシステムは、iPhoneやなんかと比べてもひどく明朗会計でよい。いや正確には不明朗なのだが、心理的にはこちらのほうが負担が少ない。このシステムはかなり将来性がある感じ。
あといつまで維持できるのかどうかはわからないが、無料でsampleが読めるのは、かなりよい感じ。現状のアマゾンでも立ち読みらしきことは可能だが、ある程度まとまった量がダウンロードして読めるというのは、かなり現実の立ち読みに近い感じでよい。
などなど、それ以外の点はよいのに、売っているソフトというもっとも重要な点が、駄目なのだ。うーん。なるべく早くにせめて日本のiTune Storeなみにしてくれ。結局、kindleが嬉しいのは東京圏で通勤している人間以外の地方在住者なのだから、たいした損失にはならないと思うのだがな。

追記の追記

けれど、もしフランス語の本が買えるようになったら、ぼくはたいへんな額のお布施をしてしまうだろう。そしてますます日本語の本を読まなくなりそうな気もする(パパのお財布には限界があるのでな)。そういう意味では、この版権で何を守っているのかといえば、案外と日本語の本なのかもしれない。