昨日はまた半日SOPとあそぶ。SOPはずいぶん言語を理解するようになった。mayakovはKobe。簡単なサンドイッチを作って、SOPに食べさせる。昨日しそこねたので今日は掃除機をかけないといけないのだが、つい今日は自転車に乗ろうねと言ってしまったがために、もう出かける気満々になってしまった。ヘルメットを新しく買ったのでそれが嬉しいのだ。玄関に座り込んで早く外に行こうと壁に掛けた真新しい青いヘルメットを指さす。掃除の途中だったのだが、あきらめてお出かけ用の荷物をまとめる。ああ食器を洗うのを忘れていた。帰ってきてから洗おう。
SOPを前に乗せ、ヘルメットをかぶせて、ゆっくりと走り出す。しばらく走ると前輪のブレーキの効きが甘いことに気がつく。ブレーキのワイヤを絞る部分がゆがんでいて、その結果ゴムの部分が車輪をきっちりと掴まないみたいだ。通り過ぎてしまったので帰りにでもこの自転車を買った巨大ショッピングセンターによって、直してもらおう。ついでにおやつでも食えばちょうどいいだろうし。
自動車を避け、排気ガスを避けて、ふらふらと自転車をこぐ。切れ目なく続く民家。つぶれそうな文化住宅に、比較的新しい煉瓦風の外壁をもった三階建ての細長い家。無秩序に出現するマンションやアパート。自転車を漕いでも漕いでもこの光景が続く。
そのうちJRの線にたどり着く。つい最近高架になったため、昔の線路が工事用のフェンスで覆われており、その結果、道路が奇妙に曖昧な空間と化したせいか、一帯の路上は駐車スペースになっている。このあたりは線路と道路が人々の生活空間を無秩序にぶった切っていたから、これからかなり町並みが変わってゆくかもしれない。
気がつくと新しい駅舎と見覚えのある光景に出くわす。Jリーグの某球団がホームタウンにしている大きな陸上競技場のある町にたどり着いた。いちども入ったことがなかったので、ハンドルを切って、その競技場のあるこれまた大きな公園の中に入る。自治体が公園から追い出したので、テントはほとんど目につかない。
競技場に着くと障害者陸上競技大会が開催されており、無料で入場できる。これはいいと思ってSOPを抱いて階段を登ると、すり鉢状の巨大な建築物にびっくりしたのか、SOPは不安がって早く帰ろうと手を引っ張る。入り口に戻ると、SOPが自転車に乗せろとせがむので、建物を後にする。少し迷ったがみちを引き返すことにする。また適当に裏道に入って、自転車を漕ぐ。同じようなしかしまったく異なる風景がやはり続く。今度は大きめの集合住宅が続く。これだけの建物にいちいち人が住んでいて、働いて稼いで飯を食っている。何度考えてもそれが安定して成立していることが不思議でならない。いや福祉施設の多いこのあたりは安定とはほど遠いのだ。危うい均衡なのだろうか。どうしても保守的にならざるをえない。
活気に満ちた一角にたどり着く。右側に観音寺、左側にスーパー・マーケットと小さな商店街。それに屋台が数多く建ち並び、無秩序にとめられた自転車のなかを人が縫うように歩いている。太った黒人のおばちゃんが何かを値切っている。ハングルで書かれたビニールパッケージの商品。ふと横を見るとフランス料理の小さな店などもある。この観音寺が気の利いたフリーマーケットでも開くとさらに人が集められるだろうにとまたつまらないことを考える。
どこかで見た光景だなあと思ったら、そういえば日曜日のアリーグル近辺に少しだけ似ているような気がしてきた。あそこより人通りがすくなく、所在なげに街角に立ってたむろしている褐色の肌の若者というのももちろんいない。けれどすでに日本語以外の言語はおもったよりあちこちから聞こえてくる。
往路は見知らぬ光景に興奮してあれこれ意味不明の叫び声を上げていたSOPだったが、話しかけると首を前後左右に揺らしながらウトウトし始めていた。そのまま大きな川を渡って、南大阪市に向かう。巨大ショッピングセンターの自転車やに自転車を預け、キャリーにSOPを寝かせて、サンドイッチを食う。