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某月某日
SOPをつれて階段を下りようとすると、下に住んでいるHさんの扉に鍵がくっついている。アレっ?と思うが、SOPはタッタカタッタカと下りてゆくので危なくてついて行かざるをえない。しばらく下で待っているとやはりmayakovが気がついたかなかなか下りてこない。SOPと一緒に階段を上ると、SOPが、文字通り下に住んでいるおばあちゃんという意味で下バーバと呼ぶHさんが玄関にへたり込むように座っていて、戸口で立っているmayakovとなにやら話をしている状況だった。どうやらうっかり鍵を抜くのを忘れたらしい。

下バーバは90+ほにゃらら歳なのだけれど、ぼけてもいないし、それどころか、人並み以上にしっかりしている。部屋はうちよりもきれいに整理整頓されていて、いつ行ってもチリひとつ落ちていない。毎日買い物籠つきの手押し車を押して、散歩しがてら買い物に行く。関東の生まれで結婚して大阪に来たから、しゃべり方はしゃっきりとした東京弁だ。近くの酒屋に行ったときには、立ち飲みのおじさんやおばさんから、拝まれたり、御利益がありそうだから触らせてと言われたりしている。部屋に飾ってある家族写真は孫ひ孫もふくめてサッカーチームが二つはできそうなぐらいの人が写っている。

続き

Hさんがこの団地に来たのは、やはりこの団地に住んでいる娘さんを頼ってのことだった。娘さんといってももう70を過ぎていた。SOPはHさんにも、娘さんにもなついて、公園を挟んで向こうの団地に住んでいた娘さんは、夕方になると自分の母親の様子を見ようと、公園を横切ってやってくる。SOPは彼女を見ると、バーバと叫んで寄っていくから、バーバも嬉しそうに頭をなでてくれていた。

けれど先にその娘さんのほうが体をこわしてしまった。年齢を考えればそういうことがあっても不思議ではない。しばらく入院していたが、退院すると今度は下バーバが、手作りのおかずを手押し車に入れて、娘さんの部屋まで運んでゆくようになった。娘さんには息子さん、つまり下バーバからすれば男の孫がいるが、彼もまた同居はしていない。面倒を見るといってもいずれ難しくはなってゆく。結局娘さんはこの団地を出ることになった。

[まだ続く]