頂き物。

解説を書いている市野川さんから御恵投いただきました。

コント・コレクション ソシオロジーの起源へ (白水iクラシックス)

コント・コレクション ソシオロジーの起源へ (白水iクラシックス)

白水から、白水iクラシックスなるものが出ているのは、気がついていたのですが、版の切れた旧訳を新装版にして出していると勘違いしており、気にもとめていませんでした。今回送っていただいたこの書物を拝見すると、このコント・コレクション(『実証政治学体系』に付された初期論文集)は杉本隆司氏による新訳であり、ざっとページをめくってみたところ、訳注なども適切で、安心して使えそうなものでした。
19世紀はぼくにとってはとりわけ苦手な時代なので、ありがたく頂戴して勉強させてもらおうと思います。
市野川さんの解説は、ブレンターノ(B)とデュルケーム(D)という20世紀を予告した二人にたいして、そのいかにも19世紀的な先行者としてコント(C)を置くというものです。Cについてはアロンの意見を容れつつ、コントには中間集団という契機が欠落していることを指摘し、それゆえにBもDも、それぞれに営業条例および結社の自由の承認という政治的変化をうけて、この媒介の水準を導入しているのだと述べています。そしてそのうえで、この「中間集団」の性格付けについては、より「社会学的」なデュルケームと、より「政治経済学的」なブレンターノという、現代的な関心に引きつけた整理になっています。
それにたいして、コントに固有の「社会」モデルとしては、同時代の生物学の影響のもとで成立したある種の全体主義という、そのかぎりにおいては否定的な評価がなされており、いわゆるBとDの「社会的なもの」にたいして、その特徴である「宗教的なもの」の契機については、軽く触れられる程度にとどまっています。
その意味では、この訳書には訳者解説は付されておらず、続巻としてまもなく刊行されるのであろう『科学=宗教という地平』に付されるということですから、そこで訳者の杉本氏がどのような解説を書かれるのか楽しみに待ちたいと思います。