とても

よい本。興味深く読んだ。われわれ(人文・社会科学系)はもはやデコレーションとポジショントークにいつまでもかかずりあっていてはならない、ということだろう。

構造デザイン講義

構造デザイン講義

これもまた東大での講義。吉阪隆正がらみでたどり着く。
欠点。本のレイアウトが例のSD選書風で、SD選書は翻訳そのものの質の他に、もともとの原著では写真がとても重要な役割をしている本なのに、それが一貫して、本の上側(だったか下側)だったか五分の一ぐらいのスペースに切り詰められてしまい、結果として図像がよくわからないということがある。無論こういった問題は価格とのトレードオフではあるから(この本は1900円)、むげに批判もできないが、しかし倍(以上)の値段でも買う人は買うのではないかという気もする。
こういうことをいうのは、建築関係というのは、雑誌がやたらときらびやかで高価なのにたいし(たぶん経費で落とすようになっているのだろう)、書物は往々にしてSD選書に代表されるかたちで、貧困なかたちになってしまっているからだ。
またそれは日本の書籍が雑誌中心であり、さらにそのことがいわゆる「出版文化」に悪影響を及ぼしている、ということかもしれない(ムックなどというのは典型的にそうだ)が、まあそういった「大人の事情」をいったん括弧に入れて、モノとして評価すると、中身が面白く、かつ教育的であるだけに、図像の小ささがとても残念であった。
が、そうまでして値段を確保したのだから、なるべく多くのひとに(とくに文系)のひとに読まれるとよいなあと思う。

しかし大学から離れている人、また大学とは縁のなかった人、縁はあったがアタリの悪かったひとに言っておくと、授業というのは、巷に溢れている書物以上に面白いものであることが多い(?少なくない?そのような場合もないではない?)ということだ。

最近、教養担当になってふと気がついた恐ろしいことがあって、たとえぼくが何を書こうと、それを読むひとの数は100のオーダーを超えないのだが、講義を聞く人は、数年間リピートすれば、あっというまに1000のオーダーになるということだ。このことの意味をどう考えればよいのか、いまだにちょっと答えが出ない。