備忘

つらつら読み返すに、あの『コーネルの箱』という本は駄目な本だ。
なんというかありきたりな枠組みに押し込んでいる。駄目すぎて、ついつい読み返して駄目なのを確認してしまう。

なんかあのコーネルというひとも変な扱いをされている。下品か上品かということでいうと、どう考えても上品な気がする。
しかしたとえばシュールレアリズムというのは下品は下品だ。耽美などというのはもう耐え難いほどに下品だ。
べつに下品がだめで、上品がよいということではなく、たいへんに違うジャンルだという気がする。だから上品/下品というのはとりあえずの表現だ。この分類はあえていうと岸どんですら上品に近いので、普通の意味での上品/下品ではない(とはいえしかしあの日本風の耽美はしかしぼくには耐え難い)。だからまだうまい表現ではない。

コーネルはよいボックス・メイカーだった。とても丈夫な箱を作ったという評のほうがよほどしっくりくる。

「そういう意味では箱を自分で作ったというのは面白いよね。」
「そうだよ。そういうことなんだよね。たぶん職人性みたいなものに近しい何かがあるんだよ。枠を自作するというのはなにかとても大事なことなんだよ。」
でも、ちんまりしていて、それはなにか大事な要素であるような気もする。でもまだきちんと言語化できない。

ともあれ、なにかうまくきちんと分類され、適切な言語化がなされていないものをみるとイライラして、頭から去らない。べつにことさらに「深く」考える必要はなくて、浅くでいいから、きちんと考えてくれれば、イライラはしない。何か適当なラベルのついた箱に放り込むのが自堕落でイヤなんだ。

たぶんパンツにうんこがついたまま歩いている感じがしてイヤなんだ。格好をつける前に尻を拭いてくれ、という感じがして、なにかきちんとした箱に入れたくてしょうがなくなる。職業病だ。