読んだ本。

後期の課題本を探しに、久しぶりにリアル(まともな)本屋に(学生には大型店舗に行かねばならないとか言ってるわりに本人になかなかその暇がないというのもしかしこれはよくありませんな)。学生さんは往々にして本を読まない子が多いので、それならと、いわゆる基礎ゼミを本を買って読む場だと割り切ることにした。だいたい2冊ぐらい読むことになるのだけれど、一年に一冊も読まないという学生が多いので、その場合、前年比は無限大に発散する(なんか間違ってるだろうか)。

籠に入れて買うのだけれど、しかし仕事の本なのであんまし爽快感はなく、むしろ欲求不満が溜まる。そういうわけで3階建ての本屋の一階下に降りると、うっかりコーマック・マッカーシーの新刊があるのを見つけてしまった。

ザ・ロード

ザ・ロード

ストレスが溜まっていたせいもあり、ついつい買ってしまう。

マッカーシーにたいしてはただでさえ点数が甘いのに、もろに父と子の話なので、さらに点数が甘くなる。たしかにSOPが生まれて以来、ここでマッカーシーが描いたようなことは、やはりぼくの頭の中でも、漠とした不安や重荷のようなものとして「体験」してきたわけで、まさにそうした曖昧なものが見事に描写されていることにはやはりすばらしいと感嘆するしかないのであるが、冷静に考えると、しかしそこには著者の、こういってよければナルシシズムが存在してはいないか、という気持ちも抑えがたい。

のだが、結局、昨日きしさいとう亭で会議にSOPを連れて向かう途中で、ついつい本屋によって買ってしまう。
The Road

The Road

やっぱり小説は難しいので、一度日本語で読んだ本を読み直すぐらいが、(使えるリソースのことを考えると)まあせいぜいかな、という気がする。が、読むとやはりほれぼれし、睡眠時間をもっていってしまう。


mayakovは「すべての美しい馬」は、馬の話ばっかりと思って途中で手放してしまったらしいが、これは一気に読んで望陀の涙に。

ちなみにSOPは本をあれこれ読んで遊ぶつもりでついてきたのだが、時間がないのでゆっくりとあれこれ本を読む時間がない。好きな本を買ってあげるからということで許してもらう。絵本のコーナーに入るなり手にとった本がこれ
やこうれっしゃ (こどものとも傑作集)

やこうれっしゃ (こどものとも傑作集)

なかなか細部に凝ったおもしろい絵本なのだが、字が書いてないのが不満だったようだ。

それとこの間、SOPに買ってあげた本のなかで出色であったのは、
どうぶつなんでも世界一 (児童図書館・科学の部屋 (別巻))

どうぶつなんでも世界一 (児童図書館・科学の部屋 (別巻))

最近はえらく動物(番組)が好きなので、いろいろ子供用の動物事典を探していたのだが、なかなかよいものがない。立派な本は多いのだが、こう、なんというか適当にルーチン・ワークとして作った感じがあって、値段もそこそこするわりに長持ちしないだろうという感じなのだ。書き手が楽しんでいるオーラがないというか。で、こういうのは翻訳物になにかよいものがあるはずと探していてジュンクで発見した。買ってからmayakovに指摘されて気がついたけれど、書いたのはバーバパパの著者たち。野生動物がたいへんに好きらしい。なんというか、ちゃんとしたプロの仕事として、汚いデザインにはなってはいないのだけれど、ページのそこかしこから、なにかしら押さえがたい過剰なものが漂ってくる。自分の子供時代のころを思い出しても、結局、大人が真剣になって作ってしまったもののほうが楽しかった記憶があるものだから、まあまあいい値段なのだけれど、ずいぶん探していたということもあって躊躇せずに買う。
本屋ではそれほど興味を示していなかったSOPなのだけれど(日本製のカラフルな奴に比べると、商品棚でのインパクトは弱い)、家に帰ると分からないなりにいつまでも熱中して読んでくれている。買って上げたものすべてが気に入るとはかぎらないのだけれど、こればかりはうまく気に入ってくれたようで、こちらとしてもすごく嬉しい。

気が利いてますね、と言ってもらいたくて仕方がないような、一発芸みたいな絵本もまあたまには悪くはないのだけれどね。

あとこれは天牛(800円ぐらいだったかな)でだけれど、ぼちぼち空いた時間で読みながら、いつしか読了(加速度的に本を読むのが遅くなる)。
にがいレモン―キプロス島滞在記 (1981年)

にがいレモン―キプロス島滞在記 (1981年)

このあいだNHKで見た、ビザンツ特集でもキプロスのことがでていたが、イギリスの統治時代などまるでなかったかのような(そのため結果的に宗教対立「だけ」が前面に出てしまっていた)話になっていたのが、その盲点のできかたが、なんともわれわれの置かれた状況を物語っているようで、読みながらついついため息。
ビザンツつながりで言うと、Sylvain GouguenheimのAristote au Mont-Saint-Michelもぼちぼち読んでいている。まだ半分ぐらいだけれど、この本もいろいろな意味でなかなか面白い。歴史と現代の、というかアクチュアルなというべきか、そうした「政治」との関係づけがわれわれはまだまだ下手なのだなあ。