続き

Hさんがこの団地に来たのは、やはりこの団地に住んでいる娘さんを頼ってのことだった。娘さんといってももう70を過ぎていた。SOPはHさんにも、娘さんにもなついて、公園を挟んで向こうの団地に住んでいた娘さんは、夕方になると自分の母親の様子を見ようと、公園を横切ってやってくる。SOPは彼女を見ると、バーバと叫んで寄っていくから、バーバも嬉しそうに頭をなでてくれていた。

けれど先にその娘さんのほうが体をこわしてしまった。年齢を考えればそういうことがあっても不思議ではない。しばらく入院していたが、退院すると今度は下バーバが、手作りのおかずを手押し車に入れて、娘さんの部屋まで運んでゆくようになった。娘さんには息子さん、つまり下バーバからすれば男の孫がいるが、彼もまた同居はしていない。面倒を見るといってもいずれ難しくはなってゆく。結局娘さんはこの団地を出ることになった。

[まだ続く]