金曜に

おっちゃんに呼ばれて、アジア情勢はどうなるかと聞かれたと思ったら、核実験になった。そのときは地政学とやらで考えるとどう考えても剣呑だから経済的に考えてほしいもんだけど、というような話をした。

石油も足らないとか言ってるし、中国の手に余るなら、あとは日本かロシアなのだろうけど、ぼんやりと考えてはみるものの、結局ロシアがどう出るかはわかりそうもないので、想像がたくましゅうなるばかりで、あまり身のあることは考えられなかった。

太陽政策というのも中途半端だからよくないのかもしれない。FTAでもなんでもやって、パイプラインでも何でもバンバン通させるという手はないのだろうか。現実味は薄いよな。材料がないのに考えてもしょうがない。やめよう。

それに今週はエクストラで一個入ってくるので授業の準備がたいへんだ。明後日の前には明日が来てしまう。不安だからといって働かないわけにゆかないような年になってしまっている。

後期の講義は福祉国家を考える(というか最近はいつも福祉国家のことを考えてしまうのだが)というのが趣旨だ。うまくゆくかどうかはわからないけれどカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を導入に使うことにした。ペイパーバックを買って、もとの英語と照らし合わせて読んでいくと、たしょうの発見はある。

たとえば訳者が、絵を描いたり工作をしたりと、説明的に訳している部分には、(たとえばmustがついたりして) be creativeという言い方になっていた。創造的、と訳されている部分もあるが、多くの場合開いて説明的に訳す方を選んでいる。ただ気持ちとしては、creativeという言葉の、手垢にまみれた感じは残しておいてほしかったような感じもある。

あのな、絵を描きたくなければ描かなくていい−先生はそう言った。工作したくなければしなくていい。ちっとも悪いことじゃない。そう言ってくれた。What she said was that if I didn't want to be creative, if I really didn't feel like it, that was perfectly all right. Nothing wrong wit it , she said.

その先生のことば

大して助けにならないかもしれないけど、覚えておいて。ヘールシャムに少なくとも一人、別の考えの人がいる。絵が描けても描けなくても、物が作れても作れなくても、あなたはとてもいい生徒。never mind how creative you are. これまでに出会った誰にも負けないいい生徒。そう思っている人間が一人いるということをね

たしかに小学校の先生とか(いや同僚にもいるのだが)、ひじょうに呑気にcreativeであることを奨励する。が、その世界のきつさはmayakovの話を聞いていると(いや俺の業界でも変わりはしない)、学校の先生ごときがうかうかと薦められるようなものではとてもない。多くの場合、ものを言うのはコネと権力だったりするからだ。そういうものを持っていて行使しているやつだけが鈍感にbe creativeとか言うのだ。
それにcreateはまた同じ話者によって別様にも使われている。(ここはネタバレなので英語のまま)

You'll become adults, then before you're old, before you're even middle-aged, you'll start to donate your vital organs. That's what each of you was created to do. You're not like the actors you watch on your videos, you're not even like me. You were brought into this world for a purpose, and your futures, all of them, have been decided. p. 80

とまあこういう感じ(created and decided)。あたりまえだけど上手いっちゃあ上手いよな。

とかね。まあ授業であんまり丁寧に解説していたら、それだけで半期終わってしまうのでほどほどにしないといけないのだけれど。ノートもいい加減にしないとね。小説は写していていると楽しいからね。