家に

帰ってSOPを寝かしつけ、コンビニにビールを買いに出かける。年を取るにつれて、どんどんビールがうまくなる。というか最近は休日になるとかならず昼間からだ。昨日もmayakovが髪を切っているあいだ、SOPの相手をしていたのだが、うまい具合に寝入ったのでcafeに入るや、やはりビールを注文してしまう。おっさんである。そういうわけでおっさんのアイテムである柿ピーを一緒に買って、一日の締めに、録画しておいた恐竜の出てくる番組(羽毛恐竜と哺乳類の生存競争)を見ようとテレビをつけたら、昼時日本列島パリ編をやっていた。いちおう世界遺産を紹介するというのが趣旨なのに、意味なく衛星使って生中継の生放送をするので、セーヌ川沿いの観光名所から一歩も外に出ない。まあとはいえテレビのフレームに映し出されているのは、あっけらかんと白々しい夏の昼間のパリであって、あの妙に暑い日々が思い出されついつい見てしまう。

なんかあまりにつらいので音声を消して眺めることに。最近のアナウンサーの両耳のあいだは空洞になっているとしか思えない。ちなみに内容は昼時日本列島を世界規模でやってみる、というNHK受信料を支払ってる人びとの神経を逆なでするための番組だ。

場面が切り替わり、古そうな柱の家の中が映し出される。屋上に上がると、シテ島に面した左岸のどこからしく、ノートルダムがすぐ近くに見える。ハラショー。満面の笑みとともに住人の老夫婦が写っているが、ふと音量を上げると、いかにもという感じでその家のいわれを語り始める。マックス・エルンストが住んでいたんですよここには。おおそうかそうか。ああ、そういえば、そういう類の話をするというルールだったよな。しかしタレントの女の子は当然のことながらスルー。いやもう何もなかったかのように話は宙に浮く。
68年の時はここからデモ隊と警察が争うのが見えて・・。そりゃ見物だったろうが、残念だなじいさんばあさんここでそういう話は無意味だよ。いまここは日本なんだ。

タレントの女の子は二年ほど留学したらしいが、自分が求めている(と思っていた)ものは日本製だったことに気がついただろうか。

途中、あらかじめ録画してあった素材の、パリの都市計画(というかランドスケープというべきか)を紹介した部分は面白かったが。

雨の日のSOPの相手は大変だ。誰に似たのか乱暴で、気に入らないことがあるとすぐに殴りかかる。それと最近は妙な知恵が付いてきて困る。怒られると自分で勝手にひっくり返ったり壁にぶつかったりして、わざとあちこちをしたたかに打ち付けて、大げさに痛がってみせる。ぼくです被害者なのはぼくです。わかったわかった、悪いのはお前じゃないよ。それにしても、誰に似たんだか。

SOPが昼寝をしているあいだ、録画しておいた『誰も知らない』を見る。前に見た(そういえばパリで見たのだった)Distanceよりはよかった。が、同じような違和感を感じる。アンバランスなところがあるのだ、えらく丁寧に作っているところと、気を抜いて、ここはコンビニの弁当でいいといわんばかりの部分が共存している。あのシーンで歌はかんべんしておくれよ。

とちゅう、一番下の女の子が誕生日を迎え5歳になる場面がある。そのとき思ったのは、ここまで成長するのに、SOPはまだ3ねん「も」あるというものだった。研究のことだけ考えていたときには、時間というのものは足らないものだった(いまでもそうだが)。10年前はすでに大学院生だったから、たとえばあと20年でどれだけのこと「しか」できないか、というのは直感的にわかる。運がよくて、いままでの10年で研究や執筆にかけることのできた時間×2でしかない。しかもおそらくそれがmaxの値だ。けれどもSOPが生まれてというもの、1年がうんざりするほど長くなった。あと20年も死ねないとは! なんという長さ!

夕方、雨が小降りになったので、三人で出かける。昨日行きそびれたので久しぶりに大規模書店に行く。あまりに久しぶりなのでちょっと途方に暮れる。最近はインターネットの本屋で決め打ちするか、天牛で古本を買うかだったせいか、うまく本を選べない。ようやく目が慣れてきた頃には閉店の時間になっていた。

連休は終わり。明日からまたいつもの日々。読んでノートを取って書く。その繰り返し。

そういえば、夏は図書館も閉まってしまうはずなのだが、いったい何をしていたんだろう。ぜんぜん思い出せない。