ニュースを聞いてたら、

NHKと(なぜか)安倍とかに、録音してたインタビューが漏れちゃってごめんねえと朝日新聞がすごく曖昧に謝ったからおれらの勝ちだよーという謎の報告を(相変わらず正規のニュースのなかで)やっていた。それってやぶ蛇違うんかと思うんだが、いいのか騒いでも。
雑誌の月刊『現代』の9月号で、魚住昭が、録音してたインタビュー・テープをさる筋から手に入れて記事にしている。(「衝撃スクープ。NHK vs 朝日新聞「番組改変論争」--「政治介入」の決定的証拠」)。
二度にわたって(しかも二度目は放送直前に別人によって)番組が切られたというのは空前にして絶後だったらしいのだけれど、これを読むと、一度目のハサミは松尾総局長も含めて納得していたのに、さらに伊藤律子制作局長がエビジョンイルになんかいわれてビビってしまって、本当に直前になって無理矢理切ってしまったために番組として不自然になってしまったというようなこともわかる。告発したプロデューサーのひとはどちらかと言えばむしろ官僚的に「気を使った」番組作りをするタイプらしいのに、この件がここまでこじれたのは、おそらくはこの二度目のハサミのタイミングがいかにも悪かったからだろう。たしかにいっぺん合意のとれた落としどころをもう一度変えてしまうのは、組織の論理としては一番やってはいけないことだ。松尾某もしかし「俺はあれでいいと思った(一回はさみを入れた落としどころバージョン)」のであれば、もっときっちり政策局長のビビリを突っぱねるべきだっただろう。この程度の説得もできないのではしかし盾になるのは向いてないタイプだ。いわゆる「組織」のひとではないな。意見が違ってもいっぺん了解したことは通すのが責任者だ。給料の差はだいたいそういう責任代だろ。

本筋については、記事を読む限りでは中川アウト。安倍ももう少しソフトにやったみたいだが、危険な火遊びだということがわかってなかったようだ。それに安倍の場合は介入の有る無しの問題以前に、問題がこじれてメディアに出た後でやった言い訳の仕方がまずいことがよくわかる。べつに嘘つかずに腹を据えてかかればよかったのに、という感じだ。ボンボンによくある軽率なタイプなのかもしれない。ぺらぺらしゃべりすぎだ。

で、記事を読んでからこれは盛り上がるでえと楽しみにしてたのに、ぜんぜん盛り上がらない。昔の毎日新聞の記者が沖縄返還交渉の日米機密電報をつきあってた外務官僚から手に入れた時のように、とりあえず中身は不問にして記者不道徳だという個人攻撃を徹底して論点をずらすんだろうか、とあれこれ気をもんでいたのに、なしのつぶて。変だなあと思っていたら、事実上アサヒが勝ったけど、謝るという変な処理になった(勝ったから謝るかな)。どうも選挙だし、郵政民営化はアサヒ政治部としてはこのさいやってもらいたいので、安倍とかエビ子分とか、もうどうでもいいやん。お互いにメンツも保てるし、録音テープが漏れたことだけ謝ってケリつけようということにしたということなんだろうか。

最初読んだときには、ひょっとして魚住昭が手に入れた録音テープはクロンカイトよろしく、でっち上げの偽物だったりするのか、それにしては詳しいなと思ってたら、どうやら本物だということはしかし今回のNHKの「勝利」宣言ではっきりした。それにしてももうちょっとそっとしておいた方がよかったんじゃないの。みんな忘れてたみたいだし。

そのへんが絡むのか絡まないのか、選挙になってからどうも安倍がおとなしいのが気になる。だいたい国民投票だとかなんとかあんな骨抜きの郵政民営化法案で、しかも論点はえらくテクニカルで、そんなことで国民投票するんか、そもそも民主が勝ったって小さい政府の民営化路線はかわらないわけでいったいなにを国民投票したいのよ。せめて北朝鮮の案件(外交)とか、イラク派兵問題(軍事)とか、内側の話ならせめてそれこそ憲法とか、もっと「大統領」らしい案件で国民投票やればいいのに。なんで妙に内向きなの。政治記者もしかし首相公選制とかくだらないおもちゃで遊んでいたんだからさ。せめて。だから安倍がもっと出てきてがんばればいいやんと思っていたのだが。これじゃあたんに気分だけの国民投票というもっともさけるべき状況だよな。

しかし郵便局の話、これであと半月もつという計算なのだろうがほんとうに大丈夫なんだろうか。